人間の脳には心身の情報伝達をするための情報網があります。この情報網の間を移動しながら情報を伝達しているのが神経伝達物質です。神経伝達物質は現在100種類以上が確認されています。神経伝達物質には興奮性、抑制性、両方の性質をもつものに分類されます。その主なものをご紹介しましょう。
興奮性の情報を伝える神経伝達物質
興奮性の神経伝達物質は脳や体を覚醒し緊張させる働きがあります。時には痛みや炎症を引き起こすこともあります。
①グルタミン酸
アミノ酸の一種でうまみ成分としても有名です。記憶や学習などに大きな関係があります。一方で過剰になると神経細胞障害作用が現れ神経疾患から神経細胞死などを引き起こすと考えられています。
②P物質 (サブスタンスP)
痛覚の伝達物質で、三叉神経節や内頚神経節に含まれています。炎症にも深く関連します。
片頭痛急性期治療薬としての研究が進んでいます。
③カルシトニン遺伝子関連ペプチド
片頭痛などを引き起こすとされている発痛物質
④ドーパミン
運動調節やホルモン調節、動機付け、快楽や喜び、意欲、学習などに関わります。依存症を引き起こす成分としても知られています。
抑制性神経伝達にかかわる物質
心身の興奮を抑えリラックスさせる働きがあります。睡眠とも深くかかわっています。
①GABA
ストレスを和らげ、興奮を抑える働きをします。
②グリシン
興奮を抑える作用があるので、睡眠の質を上げるサプリメントにも使われています。
③オピオイド
最も有名なオピオイドはモルヒネです。モルヒネ以外にもオピオイド系の成分は医療用麻薬として、手術中の痛みや大けがをした時、がんの傷みを和らげるのに使用されます。その効果は一般的な鎮痛剤とは比較にならないほど劇的なもので、時には幸福感味わことができたりします。そのため依存性が強く副作用も大きなものです。違法薬物としても知られているものです。
④ヒスタミン
アレルギー反応、胃酸分泌、睡眠と覚醒に関わる成分です。ヒスタミンが活発に分泌されると痒みが起きることで有名です。
興奮性にも抑制性にもなる神経伝達物質
①セロトニン
必須アミノ酸であるトリプトファンから作られる成分で、行動は抑制しながら気分は覚醒させます。睡眠や体温調節、性行動、摂食、神経内分泌、認知、記憶、生体リズムなど、あらゆる生命活動に影響を与えます。また末梢神経では発痛物質として働きますが、中枢神経では鎮痛作用があります。
②GABA
GABAはグルタミン酸から合成されます。基本的には抑制性でストレス緩和効果で知られています。しかし、神経損傷時には、GABAが興奮性となることがあります。
③アセチルコリン
前脳基底部、中脳橋被蓋運動神経、交感神経節前線維、副交感神経に働く物質で、骨格筋や心筋、内臓筋の収縮を促します。自律神経の内、副交感神経を刺激し、脈拍を遅くし、唾液の産生にも拘わっています。認知症の人はアセチルコリンが不足していることが確認されています。
④ノルアドレナリン
交感神経から放出されると交感神経が興奮し血圧上昇、心拍数上昇が見られます。副腎髄質ホルモンとして放出されると血圧上昇、基礎代謝率の増加をもたらします。怒りの感情や肉体疲労時に放出され体を活動しやすい状態にします。


